イジワル同居人は御曹司!?
私と桜井は反射的に振り返る。

渦中の人物羽瀬兄が会議室に入って来た。

「申し訳ありません。USBをパソコンに刺しっぱなしにしていました」

どうやら忘れ物を取りに戻って来たらしい。

「ああ…」

私は阿呆のようにポカンとしてフラフラとパソコンに向かう。

「此方でしょうか」

私はパソコンにささっていた黒いUSBメモリーを引っこ抜くと奏さんに手渡した。

「ありがとうございます」奏さんはにこりと微笑む。

すれ違いざま私の横で脚をピタリと止めた。

「もしかして邪魔した?」

奏さんは桜井に聞こえないような小さな声で囁く。

最悪…聞いてたんだ!

どうしよう!超恥ずかしい!!ぎゃー!

「何のことでしょう」

内心パニックに陥るが私は引きつった笑みで誤魔化そうとする。

「変な顔」

奏さんは見透かしたようにクスリと笑う。

何よ、笑うんじゃない。

初めて自然な笑顔を見た気がする。かなりレアだ。

まぁ、小馬鹿にされたんだけどね。

「では、また来週は宜しくお願い致します」

奏さんはお仕事モードの笑顔に切り替えると折り目正しく一礼し、会議室を出て行った。

「そういえば来週のミーティングなんだけどさ…」

桜井はさっきのやり取りをスッカリ忘れてしまっているようだ。

なんだか、ホッとしたようなガッカリしたような複雑な気持ちだ。

私も何事もなかったように、桜井と仕事の話しをしながら再び椅子を片付け始めた。
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