イジワル同居人は御曹司!?
店を出ると「藤田!」と桜井が声を掛けて来た。

「Kデザインの方々と一緒に二次会行くんだけど来るか?」

桜井はウキウキした様子で尋ねる。

「疲れたから行かない」

私がお断りすると桜井はニコニコ笑い「そっかー!残念!」と全然残念がっていない様子で言う。

数か月前、私の事を好きだって言ったのをこの男は忘れたのだろうか?

「ヤキモチ焼くなよ、藤田」

桜井はちょっと複雑な気持ちを見透かしたように、私の頭をくしゃっと撫でる。

「焼いてねーし!」思わず言い返すと桜井はあははーと笑う。

「失恋の傷を癒してるんだから大目に見て」

桜井は身を屈め私の耳元でボソリと呟く。

思わず頬を赤く染めると、その様子を見て桜井はクスリと微笑む。

「じゃあ、また来週」

両手に花を侍らせて桜井は二軒目のお店の方へ去って行った。

あれは、当分落ち着く気はないかもしれない。

私はフウ、と小さく溜息をつく。

「帰りますか」

ゆうぽんも二次会にはいかないようなので、一緒に駅まで帰る事にした。

「羽瀬さん達も二次会行ったんすかね」

「多分行ってないと思うけど…」

一次会が終わる寸前に奏さんから『おめでとうございます』という他人行儀の挨拶を頂いたが、店から出ると神隠しにでもあったように姿をくらませていた。

栞とコスメ事業部の女子たちも躍起になって探していた。

結局、全然お話出来なかった。

今日はメイクも髪もバッチリだったのにな…。

やっぱり人生思う通りにはいかない。
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