キラキラ想い出マーブルチョコレート


水族館を出たあとは、港のある街を並んで歩いた。
欄干を横目に歩く間、近藤さんはハニカムように仕事の話や友達の話を聞かせてくれた。
まるで、水族館での沈黙を挽回するみたいにたくさん話してくれる。

「あ、なんか俺の話ばっかで、ごめん」

フランクに、だけど申し訳なさたっぷりに謝るその姿勢がなんだか可笑しくて、私はつい小さく声をあげて笑ってしまった。

「そんなに気を使わないでください」

笑顔を向けると照れたような顔をしてから、一瞬何か意を決したような顔をした後、徐にカバンの中から何かを取り出した。

「これ」

それを私の前に差し出された時、太陽が反射する水面のキラキラが、差し出されたそれに更に反射して眩しさに目を細めずにはいられなかった。
同時に心臓がギュッとなり、ドクンッと大きく心音が鳴る。

「これ、懐かしくないですか? 俺、子供の頃によく食べてて」

笑顔つきで見せられたものに私の心が震える。

近藤さんの手にあるのは、キラキラのリング。
赤や緑や黄色やオレンジのカラフルなチョコレートが散りばめられている、あの懐かしいお菓子だった。
その中には、ピンクも。

どうして……。

声にならない質問が喉元でくすぶった。

「これが好きで、おやつはこれにして欲しいって、母親によく言ってて」

昔のことを照れくさそうに話してから、槇田さんには何色がいいかな? というように近藤さんはマーブルチョコレートを見ている。
その姿を見ながら、感情がザワザワと掻き立てられていくのを感じていた。
こんなのはたまたまで偶然だと思っても、ドキドキと鼓動が速くなるのを止められない。


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