きみの愛なら疑わない

「何?」

「あ、あの……大丈夫ですか?」

隙間からでも分かるほど顔色が悪い。

「別に。君には関係ないでしょ」

そう言われることは予想していた。けれど実際に体調が悪そうなのを見たら引けるわけがない。

「風邪ひいたんじゃないですか? 具合悪そうですよ」

「…………」

何も言わずに私を見返す。

「早退した方がいいんじゃ……」

「構わなくていいから仕事に戻って」

ドアを閉められそうになったから、思わず手でドアを押さえてしまった。

「何してるの。手をどけて」

「でも……」

迷っていると突然ドアにかかる力が弱まった。隙間から見える浅野さんがふらついた。

「浅野さん!?」

強引にドアを開けて中に入った私は浅野さんの体を支えた。

「大丈夫……だから、仕事に戻って……」

「全然大丈夫じゃないですよ。お水持ってきますか?」

「いや……さっき持ってきてくれたから……」

浅野さんの視線の先には簡易ベッドに無造作に置かれたメガネと緑茶のペットボトルがあった。さっき今江さんとすれ違ったのはこのペットボトルを持ってきたからかもしれない。

私は浅野さんを簡易ベッドに寝かせた。額に触れると明らかに熱があるようだ。

「浅野さん、もう帰った方がいいです。熱がありますよ」

「うん……」

「迎えに来てくれる方はいますか? ご家族は?」

浅野さんは一人暮らしだ。だけど優磨くんが浅野さんの実家は城藤の家の近くと言っていたから、ここからもそう遠くはないはず。

「いや……優磨に来てもらう……」

「え?」

「家族は今隣県にいるから……」

「そうなんですか」

「美麗とだめになってから、実家は引っ越したんだ……地元には居づらくなったからね」

「…………」

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