きみの愛なら疑わない

「姉も親もふざけてますよ。慶太さんがどれだけショックを受けたかも知らないで。姉だけ匠のそばにいて楽な生活をしてるなんて」

優磨くんの怒りは理解できる。身内だからこそ許せないことがあるのだ。

「バンドがメジャーデビューして人気になったのに美麗さんが今更戻ってきたのは匠のスキャンダルがあったから?」

「そうです。今度は姉が浮気をされたんですよ。相手は女優ですから、かなりニュースになりましたよね。散々姉を利用して捨てる男も最低ですけど、姉も自業自得です」

美麗さんに支えられてきたのに、売れた途端に女優に乗り換えた。匠も所詮はその程度の男だったのだ。

「それで美麗さんは浅野さんに会いに来たのか……」

『慶太じゃないとだめだって気づいた』なんて白々しい言葉を吐いて、都合が悪いときだけ戻ってくる。そんなことは普通の神経では受け入れられない。

「大丈夫ですよ。慶太さんももう姉には会いたくないでしょうし、姉も今はショックを受けて取り乱しているだけです。しばらくすればまた新しい男を見つけますよ」

「うん……」

「慶太さんには美紗さんが必要です」

「優磨くん、ありがとう」

「こちらこそ、ありがとうございます。慶太さんをよろしくお願いします」

車から降りた私は運転席の開いた窓に向かって頭を下げた。スロープを上がっていく車が見えなくなるまで手を振った。

マンションの中に入るのはいつも浅野さんと一緒だった。
初めて操作盤に鍵を差し込みエントランスに入った。エレベーターで上がると降りた目の前が浅野さんの部屋だ。

優磨くんには入っても大丈夫と言われたけれど本当に入っていいのか迷ってしまう。今の私に勝手に入ってこられたらいい気はしないかもしれない。

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