きみの愛なら疑わない
「潮見さんにも店長にも僕から言っておくから」
あ、まただ。
「意識が足りないし確認不足」
また浅野さんは冷たい声と冷たい態度で叱責するのだ。潮見や店長を、今江さんと同じように。
前にもあった。同じような言葉を聞いた。浅野さんが新人だった私に冷たく言った言葉が頭の中で蘇る。
「あんまり責めないであげて……」
思ったことが思わず口から出た。
「え?」
浅野さんは不思議そうな顔で私を見た。
「あ、あの……」
意識せずに言葉が出てしまったことに焦った。
「あんまり責めないであげてください……」
一度言ってしまったことはしょうがない。聞かれてしまったら取り消せない。
「確かにやってはいけないことかもしれませんが、完璧な人なんていないんです……」
「…………」
だからこの際言ってしまおう。今まで言えなかった事を。
「今江さんにもそうです。彼女泣いてましたよ」
「え?」
「仕事に対して甘くしろとは言いません……もう少し言い方を柔らかくして頂けませんか?」
「…………」
浅野さんは目を丸くして私から視線を逸らさない。何も言わずにじっと見つめられる。初めて浅野さんとこんなに近くで見つめ合って、緊張で眩暈がする。その視線に耐えられそうにない。
「す、すみません!!」
私は慌てて謝った。上司に言うセリフじゃない。私はとんでもなく失礼なことを言った。いくらなんでも言い過ぎだ。
でも伝えたかった。浅野さんの言葉に、態度に、傷つく人は必ずいる。そんな風に周りを、自分を、悪者にしないでほしい。
「そうだね」
ふっ、と浅野さんは優しく笑った。その顔に私は惚けた。
「足立さんの言う通りだね。言い方に思いやりがなかったよ」
「失礼なことを言ってすみません……」
私は頭を下げたけれど浅野さんは「いいから」と優しく言葉をかける。
「確認不足は僕にも責任があるよ。そっか……今江さんを泣かせちゃったのか……」
今度は困った顔をする。
「あのっ、本当にすみません!」