きみの愛なら疑わない
浅野さんに失礼なことを言って困らせた。生意気な部下と思われてしまった。
「足立さんにも怒ったことがあったのに、今度は僕が怒られるなんて情けないね」
「いえ……すみません」
何度も何度も謝る。浅野さんを困らせたかったわけじゃないのに。
「今江さんには僕がきちんとフォローするから。ありがとう」
「いえ……」
「写真は店長が撮り直して送ってくれることになったから」
「分かりました」
浅野さんは私から顔を背けてパソコンを向いた。その態度はこれで話は終わりだという合図だ。
私はそっと浅野さんから離れた。フロアに残る数少ない社員の視線を感じながら。
今のやり取りはフロア中に聞こえていたはず。恥ずかしいやら情けないやらで私も泣きそうだ。
これ以上浅野さんが怒る姿を見たくない。困った顔をさせたくない。
お昼前から降りだした大粒の雨は一時的なものだったようで、今では強い西日が窓から差し込みパソコンの画面が見づらくなっている。
雨が上がると店舗管理課の社員は外出してしまい、フロアには企画管理課のわずかな人数しか残っていない。
静かなフロアのドアが開いて席を外していた浅野さんが戻ってきた。その手には缶コーヒーが握られていた。
浅野さんはフロアをきょろきょろと見回すとホワイトボードに視線を移した。まるで誰かを探しているようだ。そうして再び目的の人を探してかフロアから出て行った。
ただの直感だけど、もしかしたら浅野さんは今江さんを探しているような気がした。
私はとっさに浅野さんを追った。どうしてそうしようと思ったのかは分からないけれど。
ドアを開けた先に浅野さんの姿は既になく、エレベーターが動いて下の階に移動していた。
私は止まった階を確認してエレベーターのボタンを押した。そうしてエレベーターに乗り込んで浅野さんが下りた階で私も下りた。