きみの愛なら疑わない

今すぐ二人から離れたいのに、駅に行きたい私と同じ方向に二人は歩いている。私の歩くペースの方が速くて、このまま歩き続けたらどんどん二人に近づいてしまう。
早く帰りたいけど二人を追い越せない。私は駅の近くのカフェに寄ることにした。

スクランブル交差点を左に行くと会社が経営するブックカフェがある。私の顔を覚えている社員がいるかもしれないから気まずいけれど仕方がない。

信号待ちをする二人から離れて青に変わるのを待った。駅へは信号を直進する。ここからは駅に行くだろう二人の姿を見なくてすむ。
信号が青に変わった瞬間私は左へ行こうとしたけれど、目の前の浅野さんは今江さんと別れて私と同じ方向へ歩き出した。

今江さんはそのまま駅の方へ向かい、浅野さんは私の前を歩く。このまま二人で帰るのかと思ったけれど、どうやら違うようでほっとする。今江さんに缶コーヒーを差し入れて励ましていた姿と相俟って不安になっていた。もしかして今江さんに対して変な気があるんじゃないかって。
二人の関係、浅野さんの誠実さを一瞬でも疑ってしまって心の中で謝罪する。

信号が点滅して今更駅の方向には行けなくなった。
せっかくだからこのまま浅野さんと同じ方を歩いてブックカフェに寄っていこう。



数分歩いても浅野さんは変わらず私の前を歩き続けている。

浅野さんどこに行くんだろう。他の女の子とデート……だったりして。

気になるけれど後をつけるのは悪い気がした。私はもう浅野さんに後ろめたいことはしたくないから。

目的のブックカフェの看板が見えてきた。すると私の前を歩く浅野さんはそのブックカフェに入っていった。

あれ? 浅野さんもブックカフェに入るの?

思わぬ偶然に戸惑う。会社が経営するカフェだからレストラン事業部の浅野さんが行っても不思議じゃない。確か数年前の店舗担当者でもあったはずだし。

< 18 / 164 >

この作品をシェア

pagetop