きみの愛なら疑わない
こうなるとブックカフェには入りづらい。駅まで一緒に歩くくらいならよくても、カフェはしばらく同じ空間にいなくてはならない。浅野さんとの距離を掴みかねている今は緊張してしまう。
ガラス張りの店内からは見えないように店頭に置かれたウェルカムボードを見た。今夜のお勧めメニューはオムライスとオニオンスープのセットだ。日が落ちて肌寒く、小腹が空いた私には魅力的だ。
中に入るかそれとも帰るか迷っていると、店内から箒と塵取りをもった男性店員が出てきた。二十代前半くらいのその店員は芸能人かと思えるほどイケメンだった。
ウェルカムボードを見る私と目が合いニコッと笑顔を向けられる。人懐っこそうな笑顔に私もつられて軽く頭を下げた。
私と年はさほど変わらないけれど見たことのない顔の男の子だ。社員じゃなくアルバイトの子だろう。
「よければ店内にもメニューがありますのでどうぞ」
「あ、はい……」
迷っていた私は店員に促されてブックカフェの中に入ってしまった。
壁一面に並べられた本棚の中央にコの字型カウンターがあり、その中では店員がドリンクや食事を作っている。店内を見回すと一人掛けソファーには年配のお客さんや学生らしき子が座っていてほとんど満席だ。
浅野さんはカウンターに座って女性店員と話している。その店員には見覚えがある。早峰フーズの社員でこのブックカフェの店長だ。
「いらっしゃいませー……あれ?」
客だと思って声をかけた店長は私の顔を見て社員だと気づいたようだ。
「えっと……足立さんですよね?」
「あ、はい……お疲れ様です」
数回会って電話でも何回か話したことがある。店長は私の顔を覚えていてくれたらしい。
「あれ?」
浅野さんも私に気づいて驚いた。
「足立さん、どうしてここに?」