きみの愛なら疑わない
#2 軽薄者を許さない男
◇◇◇◇◇
ブックカフェを慌てて出てきてしまって以来、浅野さんとまともに会話をしていない。きっと変な人だと思われているかもしれないことが恥ずかしい。
12月に入り、あっという間に忘年会の日となった。毎年レストラン事業部の社員全員で忘年会が通例になっている。年末に休業している自社の店舗を貸し切りにして、調理員の作る料理を食べるのだ。
けれど私にとってはあまり楽しくない時間だ。同じ部署、同じ課の同僚と飲むのなら構わないけれど、今日は苦手な男がいる。私の隣に座ってやたらと話しかけてくる熊田という社員だ。
「これ俺が作ったんだ。足立さん食べてみてよ」
「ああ……はい……」
白身魚とパプリカの炒め物を勧めてくる熊田さんは私の同期だ。同期だからといって特別親しみを感じたりはしない。けれど、熊田さんは会う度に絡んできて鬱陶しく思うことがある。
「全然飲んでないじゃん。もっと飲もうよ!」
「はい……」
空いたグラスにどんどんビールを注いでくる。
熊田さんはこの店に勤務している。仕事で店に来たり電話を掛けたりするとしばらく捕まって逃げられない。
「足立さん今度さ、同期会やろうよ」
「はあ……同期会ですか……」
「入社して3年になるしさ。ここで親睦をさらに深めようよ」
そう言うと組んだ足を組み替えるふりをして私に体を近づけた。馴れ馴れしい態度に寒気がする。
「そうですね……いいんじゃないですか?」
「もう! 何でいつもそんなよそよそしいの? 俺ら同期じゃん。敬語やめてフランクにいこうよ!」
ブックカフェを慌てて出てきてしまって以来、浅野さんとまともに会話をしていない。きっと変な人だと思われているかもしれないことが恥ずかしい。
12月に入り、あっという間に忘年会の日となった。毎年レストラン事業部の社員全員で忘年会が通例になっている。年末に休業している自社の店舗を貸し切りにして、調理員の作る料理を食べるのだ。
けれど私にとってはあまり楽しくない時間だ。同じ部署、同じ課の同僚と飲むのなら構わないけれど、今日は苦手な男がいる。私の隣に座ってやたらと話しかけてくる熊田という社員だ。
「これ俺が作ったんだ。足立さん食べてみてよ」
「ああ……はい……」
白身魚とパプリカの炒め物を勧めてくる熊田さんは私の同期だ。同期だからといって特別親しみを感じたりはしない。けれど、熊田さんは会う度に絡んできて鬱陶しく思うことがある。
「全然飲んでないじゃん。もっと飲もうよ!」
「はい……」
空いたグラスにどんどんビールを注いでくる。
熊田さんはこの店に勤務している。仕事で店に来たり電話を掛けたりするとしばらく捕まって逃げられない。
「足立さん今度さ、同期会やろうよ」
「はあ……同期会ですか……」
「入社して3年になるしさ。ここで親睦をさらに深めようよ」
そう言うと組んだ足を組み替えるふりをして私に体を近づけた。馴れ馴れしい態度に寒気がする。
「そうですね……いいんじゃないですか?」
「もう! 何でいつもそんなよそよそしいの? 俺ら同期じゃん。敬語やめてフランクにいこうよ!」