きみの愛なら疑わない
参列者もスタッフも止める間もなく、2人がドアから出ていくまで誰一人として動くことができなかった。最前列に座った新婦の父親が我に返り慌てて追いかけ始めたのをきっかけに、何人かは後を追うようにチャペルから出ていった。
ざわついたチャペルの中で私一人だけがこの状況でも冷静に座っていた。いや、作戦が成功した嬉しさで高揚していると言ってもいい。
新婦の逃亡が式の演出なのかと疑う参列者もいたけれど、さすがの破天荒な新婦もこんな演出などしないし、演出ではないことを私と新郎はよく知っている。
祭壇に目を向けると、虚ろな顔をした新郎がチャペルのドアを見つめて立っていた。花嫁が戻ってくることを願うかのように。
その顔を見た私は高揚した気持ちが一気に落ち始める。やはりこの男は新婦を愛していたのだと今改めて思い知らされた。
幸せな生活の始まりを突然壊されて、新婦の裏切りを初めて知って、呆然としている彼を見るのは辛かった。
だから私はこの結婚に反対だったんだ。
花嫁の幸せと引き換えに、幸せを手に入れるはずだった男が不幸のどん底に落とされた。その原因を作ったのは私にも責任がある。私が花嫁と出会わなければ、彼女の秘密を知らなければ、この結婚を心から祝福していれば、もしかしたらみんなが幸せなままでいられたのに。
ひたすらドアを見つめる新郎の虚ろな瞳の奥が読み取れない。
悲しいの? 怒っているの?
ごめんなさい……本当にごめんなさい……けれどこの結末は間違っていないんです。
新郎に心の中で話しかけた。
ガラス越しの澄んだ空も海も、魂が抜けたような男には不釣り合いだ。誓いのキスに合わせて吹き出す水のアーチを見ることはもう叶わない。
私は今日、この人の人生を壊してしまった。裏切り者の花嫁の共犯者なのだから。