きみの愛なら疑わない
「足立さん、ここは会社で今は業務中だよ。そんな話は場所を考えないと」
この期に及んで真面目に話し合おうとせず、終わらせようとする浅野さんに強くなる声を押さえられない。
「ならこちらにどうぞ!」
私はすぐ横の小会議室を指した。
「ここなら誰にも聞かれず話ができます。それとも、プライベートで会っていただけるのならその時にお話します!」
私は強気だ。だってもう浅野さんを逃がしたくない。私だって逃げない。
「知ってると思うけど、僕今忙しくてプライベートな時間も犠牲にして仕事してるんだよね」
「では少しでもお時間のあるときに合わせます」
「そんなに僕のことが好きだって話がしたいの?」
「はい!」
「…………」
もう滅茶苦茶だ。しつこくて自分でも嫌になるくらい浅野さんを好きだと言い過ぎた。引かれてしまう。嫌われてしまうかもしれない……。
「ふっ、ははは」
浅野さんが突然笑いだした。
「浅野さん?」
「ははは、ごめん……足立さんがあまりにも一生懸命だから」
こんなに笑う浅野さんを見るのは初めてだ。でもそれが嬉しいとは今は思えない。
「笑わないだください! 私は必死なんです」
「ごめん……」
浅野さんはメガネに手を添えてずれを直すと、私を真っ直ぐ見た。
「足立さんはどうしたいの? 僕と付き合いたいの?」
「はい!」
「今の僕はそういうのは遠慮したいんだ」
「…………」
真面目な顔になってしまった浅野さんに返す言葉がない。そう言わせてしまった原因の一つが私だと容易に想像できたから。
「私は浅野さんを幸せにしたいです」
「は?」
これまた初めて浅野さんの口から間抜けな音が出た。
「私に好かれる人は幸せだって浅野さんは言いましたよね。なら私が浅野さんを幸せにしたいと思います」