きみの愛なら疑わない
この人は一体どういうつもりでそんなことを言うのか。私が気持ちを伝えたというのに、別の男が私に会いたいと言うのだから。
浅野さんの感情を読もうとしても背中を向けられたまま顔が見れず何を考えているのか分からない。
「そうですか。じゃあまた行ってみますね」
声にこもる不満を抑えることができなかった。
「よろしく」
「それだけですか? 私に言いたいことは」
「…………」
エレベーターのドアが開くと浅野さんは私と最後まで目を合わせないまま先に降りてしまった。
「待ってください!」
閉まりかけたドアを無理矢理開いて浅野さんを追いかけた。
「浅野さん!」
通路の先で彼は私を待っていた。
「何?」
少しも表情を変えず、私が引き留めたことを煩わしくも思っていそうだ。
「借りていたお金をお返しします」
私は財布から一万円札を出して浅野さんの前に差し出した。
「返さなくてもいいのに」
「そういうわけにもいきません。ありがとうございました」
浅野さんは一万円札を受け取った。
「それじゃ」
「話を聞いてください!」
引き留め続けなければこの人は私から逃げてしまう。
「私は浅野さんが好きです」
「…………」
「素面でもこの気持ちは変わりません。何もなかったことにはしないでください」
一度言ってしまったらもう怖くない。私の気持ちをぶつけることを。
「優磨が君のことを気に入ったみたいだ」
尚も優磨くんの気持ちを押し出して私と向き合うことを避ける。
そうか、私に彼氏がいるのか気にしているのは優磨くんなのかもしれない。浅野さんは代わりにそれを潮見に聞いたのだ。
「それでも私は浅野さんが好きです! 優磨くんは関係ない。浅野さんの口から他の男性のことなんて聞きたくありません!」
例え優磨くんが浅野さんの友人でも。私のことを気に入ってくれているとしても。