きみの愛なら疑わない

「こんばんは! 来てくれてありがとうございます!」

店内の静寂を壊す優磨くんの声に他のお客さんも私を見た。

「優磨、声が大きい!」

「すいません……」

店長に怒られてうな垂れる優磨くんはまるで犬のようだ。

「お疲れ様です」

私は笑いながら店長や他のアルバイトの子に挨拶をすると優磨くんの前のカウンター席に座った。

「この間はすいませんでした。気まずい空気にしてしまって」

そういえば二人にしか分からないことで優磨くんが浅野さんに窘められたっけ。

「いえ、私がいたせいで浅野さんが怒っちゃったかもしれないから……」

「それは違いますよ。慶太さんとはいつもあんな感じだから気にしないでください」

優磨くんは慣れているのだろう。浅野さんの扱い方も熟知している。

「何飲みますか? それともお食事していかれます?」

「じゃあブレンドお願いします」

「かしこまりました」

今日のおススメのビーフシチューが気になるけど、長居するつもりはなくてコーヒーだけを頼んだ。

優磨くんがカップにブレンドを注ぐ間、先日読みかけて閉じた雑誌が目に入った。1ヶ月近くたつのにまだ変わらず置かれたその雑誌をラックから取った。
慌てて閉じたページをもう一度開く。そこにはカメラ目線で並んで立つ四人の姿がある。

KILIN-ERROR(キリンエラー)』という四人組バンドは昨年デビューして、曲が人気アニメの主題歌に起用されたのをきっかけに10代から20代の女性に人気だ。

『デビューから1年を迎えた彼らの素顔』。そう大きな見出しがある。次のページにはメンバーそれぞれのインタビューと新曲の告知が掲載されている。

写真で見る彼ら、特に左から二番目の彼は私が最後に見たときよりも顔つきが大人になり、メイクとプロのカメラマンの手によってイケメンと呼ばれる部類に見える。

インタビューの中身にはさほど興味がない。このインタビューでは語られない素の部分を私はよく知っているから。

< 41 / 164 >

この作品をシェア

pagetop