きみの愛なら疑わない
彼女は自分から匠と離れられない。匠が縛る限り。
「俺は美麗が結婚するまでの関係のつもりだったよ」
「でも美麗さんは結婚してからも匠さんとの関係を続けるつもりでいます」
「え……それは知らなかったな」
匠は本当に驚いている。自分の発言がどれだけ美麗さんを惑わせているかを自覚していない。
「そんなのは間違ってます。匠さんもそう思いますよね?」
「…………」
「だから匠さんから美麗さんと別れてあげて欲しいんです」
「…………」
匠はしばらく考えて「分かった」と言った。
「美麗が幸せになることが俺の幸せでもあるから」
「ありがとうございます」
私は心から感謝の気持ちを匠に伝えた。
これで美麗さんは慶太だけを見てくれる。慶太は何も知らないまま傷つくことなく美麗さんと幸せになれるのだ。
「美紗ちゃん!!」
もう夜だというのに突然押し掛けてきた美麗さんがアパートのドアの外で泣き叫んでいる。ドアを壊す勢いで激しく叩いてチャイムを連打する。
「美麗さん、近所迷惑ですから……」
私は外で泣く美麗さんを部屋の中に入れて落ち着かせた。
「どうしたんですか?」
美麗さんは涙でメイクが落ちて顔がぐしゃぐしゃだ。母が仕事に行っていてよかった。今の美麗さんの状態を詮索されないから。
「匠に別れようって言われて……」
ああ、そのことか。
ついに匠は美麗さんのために身を引くことを告げたのだ。
「でも美麗別れたくなくて……」
「んん?」
「そうしたら匠が俺を選んで結婚をやめるか、慶太と結婚するか、どっちか選んでって……」
私は溜め息が出る。どうしてそんなことになるのだ。美麗さんに選ばせるやり方ではだめなのだ。匠が美麗さんを振ってくれると期待していたのに。