きみの愛なら疑わない
「私に聞かれてもわかりませんよ……」
そんなことを私に判断できるわけがない。
話を聞く限りではお腹の子は匠の子である確率が高い。
匠の子を妊娠して、このまま慶太と結婚したら美麗さんに振り回されてきた人たちはどうなってしまうの?
「きっと慶太は美麗さんの妊娠を喜んでくれると思います」
「そうだよね」
「でもそれは自分の子だと思っているからです。もし匠との子だったら慶太と育てるんですか? そんなの最低ですよ。結婚してはだめです。子供が大きくなるにつれて慶太と似なくなります。そのときに現実を知るなんて残酷すぎます」
私の冷たい言い方に美麗さんの肩が震えた。何も知らない慶太があまりにも可哀想だ。
匠と別れればいいだけと思っていたのに私まで戸惑う。
美麗さんは慶太を選ぶべきだった。二人が結婚すれば慶太も美麗さんも幸せになれると信じた。けれど妊娠したのなら話は違ってくる。
彼の笑顔がまたしても頭に浮かぶ。思わず目を引いたあの笑顔を歪ませてしまうのだ。美麗さんのお腹の子供がそうさせる。いつか真実を知ったらどんなに傷つくだろう。
この状態で慶太と結婚してはいけない。
「もう……なんで妊娠しちゃったんだろう……」
落ち込む美麗さんにそれは自分が悪い、妊娠を後悔するならどうして匠と寝たのだ、と吐きかけようとした言葉を飲み込んだ。もう今さら何を言っても遅いのだ。
「私には子供を産んだ方がいいとも、おろした方がいいとも言えませんよ」
美麗さんが顔を上げて私を見た。
「お腹にいるのは命です。簡単に決断してはだめです」
それにもう子供ができてもできなくても、そんなことは関係ない段階なのだ。式は目前に迫っている。
「おろすなんて……できないよ……赤ちゃん産みたいよぅ……」
美麗さんは嗚咽を堪えている。