きみの愛なら疑わない
「慶太さん言ってましたよ。美紗さんがあんまり話しかけなくなったって」
「作戦ではないけど……」
優磨くんの知らないところで浅野さんと気まずい時間があったのだから、私からはもう戦意が無くなりつつある。
「浅野さん、そんなこと優磨くんに言ったんだ」
「結構話してくれますよ、美紗さんのこと」
「へー、意外……」
どうせ優磨くんの私に対するイメージを良くして後押ししたり、早く付き合えとか何とか言っているに違いない。
「押してだめなら引いてみろ作戦は効き目ありです」
作戦なんかじゃない。小細工はあの人には通用しない。私に振り回されたりなんかしないんだから、優磨くんの勘違いだろう。
映画の内容はほとんど頭に入らなかった。主演女優と匠のことを考えてしまって。
スクリーンの中の女優は高校の制服を着て、泣いたり笑ったりキスだってしていた。
美麗さんとこの子はタイプが違う。清楚で真面目で演技も抜群に上手い期待の女優。バラエティーやトーク番組に出てもきちんと敬語を使える可愛らしい女の子だ。美麗さんとは何もかもが違っている。その事が複雑な過去を持つ私達には残酷だ。
隣に座る優磨くんは知ってしまっただろうか。今何を思ってスクリーンの彼女を見ているのだろう。
上映が終わったのは22時を少し過ぎた時だった。駅に向かうのかと思ったけれど優磨くんは繁華街の奥にどんどん歩いていく。
「優磨くんどこ行くの? 帰らないの?」
「今から本格的に作戦開始なんですよ」
「え? どういうこと?」
そういえば映画に行くのも作戦と言っていた。映画に行くことと帰らないことの何が作戦なのだろう。
「ここら辺でいいですかね」