GREEN DAYS~緑の日々~
夏穂は洸の事を思い出していた。あの時、洸は何もかも大丈夫だからと夏穂に告げた。だが夏穂は不安だった。今から見る社会。自分は果たして社会の中に溶け込んで行けるだろうか。美しい物を見ていれば良かっただけの時代は終わりつつある。これからは全てを見て行かなければならない。
洸は、この世で一番純粋な心の持ち主だったと思う。間違えた負い目を負った瞬間、洸は自分で自分の事を責めてしまったのだ。そしてすべてを捨ててしまったのだ。愛する人すべてを。だが、誰がそんな洸の事を笑えるだろう。誰にも笑わせはしない。洸のせいではないのだから。いつか洸とした約束。自分がいなくなったら静かに見送って欲しい、と。多分、洸が全てを捨てた時、周りの人間が騒いだのだろう。どうして?、と。だとしたらこれ以上、洸の事を聞いてはいけないのだろう。探してはいけないのだろう。聞いてはいけないのだろう。それは一番洸が喜ばない。
夏穂は息を漏らした。洸との日々。あれは夢だったのだろうか。それとも自分がどうかしてしまったのだろうか。いや、洸はいた。いた。自分の側に。そして自分の事を泥の中から這い上がらせてくれた。白く細い腕で力強く。そして輝明とも再びめぐり合わせてくれた。確かに父親が出て行ってから、色々嫌な事もあった。だがすべてがそうではなかった。玲子がいて瑞恵もいた。そして国人がいて優美とも仲直り出来た今、自分は幸せだと痛感出来る。心の底から。何もかも洸のお陰だ。そして自分を取り囲んでくれている周りの人間すべての。洸は言った。今の綺麗なもの、美しいものを忘れるな、と。少し前まではその言葉の意味すらわからなかった。だけど今は何だかわかる様な気がする。忘れない。何もかも。決して。
「おい」
無口な夏穂に国人の心配の呼びかけ。夏穂は国人の背中に顔を寄せた。そして思っていた。これから飛び出す未知の社会。そこには必ず洸がいる。どこでもいつでも洸が側にいてくれる。見守っていてくれる。そうに違いない。輝く日々を共に歩いた洸が。
夏草が揺れている。やがて来る緑のトンネル。夏穂は風を受けながら顔を少し上げ、そして小さな声で「負けねえぞ」と呟いた。
洸は、この世で一番純粋な心の持ち主だったと思う。間違えた負い目を負った瞬間、洸は自分で自分の事を責めてしまったのだ。そしてすべてを捨ててしまったのだ。愛する人すべてを。だが、誰がそんな洸の事を笑えるだろう。誰にも笑わせはしない。洸のせいではないのだから。いつか洸とした約束。自分がいなくなったら静かに見送って欲しい、と。多分、洸が全てを捨てた時、周りの人間が騒いだのだろう。どうして?、と。だとしたらこれ以上、洸の事を聞いてはいけないのだろう。探してはいけないのだろう。聞いてはいけないのだろう。それは一番洸が喜ばない。
夏穂は息を漏らした。洸との日々。あれは夢だったのだろうか。それとも自分がどうかしてしまったのだろうか。いや、洸はいた。いた。自分の側に。そして自分の事を泥の中から這い上がらせてくれた。白く細い腕で力強く。そして輝明とも再びめぐり合わせてくれた。確かに父親が出て行ってから、色々嫌な事もあった。だがすべてがそうではなかった。玲子がいて瑞恵もいた。そして国人がいて優美とも仲直り出来た今、自分は幸せだと痛感出来る。心の底から。何もかも洸のお陰だ。そして自分を取り囲んでくれている周りの人間すべての。洸は言った。今の綺麗なもの、美しいものを忘れるな、と。少し前まではその言葉の意味すらわからなかった。だけど今は何だかわかる様な気がする。忘れない。何もかも。決して。
「おい」
無口な夏穂に国人の心配の呼びかけ。夏穂は国人の背中に顔を寄せた。そして思っていた。これから飛び出す未知の社会。そこには必ず洸がいる。どこでもいつでも洸が側にいてくれる。見守っていてくれる。そうに違いない。輝く日々を共に歩いた洸が。
夏草が揺れている。やがて来る緑のトンネル。夏穂は風を受けながら顔を少し上げ、そして小さな声で「負けねえぞ」と呟いた。