鉢植右から3番目


 ――――――――――なんだと!?呆れて私はヤツをガン見した。私の凝視を全く気にしていないらしいヤツは淡々と麺を湯がき、インスタントラーメンを完了させようとしている。

「ちょっ・・・ちょっと待って!」

 私は慌てて冷蔵庫を開く。そして固まった。

 ・・・・私が出て行った日のまま、ですけど。

 いやいや、固まって呆然としている場合ではない!何とか使えそうなベーコンを発見し、それから自分で帰りに買ってきた卵とモヤシを袋から出した。

 そして湯きりをしているヤツの隣では狭いので、テーブルにまな板を置いてベーコンを刻む。

 ヤツが先にごま油を入れた丼に麺とお湯を入れて粉スープを溶いている間、もやしとベーコンを塩コショウで炒める。余ったお湯を再度沸騰させ、そこに卵を割り入れた。

 ヤツが具材の入っていないラーメンの丼をテーブルに持って行き、座った所にフライパンを持って突進し、もやしとベーコンの炒めたのを上から入れる。

 ヤツが食べだした横から半熟卵も追加して丼に落とした。

「ありがと」

 簡単にそう言って、ヤツは後はいつも通り黙々とラーメンを食べた。

 私はふう、とため息をついて、まあ、とりあえず・・・と買ってきた食材を冷蔵庫にしまった。ずっと冷蔵庫に放置されていた食材はごめんなさいと謝ってゴミ箱に捨てる。

 それから自分の旅行鞄を自室に放り込んで、黙々と食べるやつとテーブルを挟んで座った。

「・・・もしかして、毎日それ食べてたの?」

 小さな声でゆっくりと聞くと、相手はうんと返す。その声は淡々としていて、怒りも諦めも嫌味も何も感じ取れなかった。ただ、質問に答えたってだけ。


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