鉢植右から3番目


 私には中途半端にそれがない。

 顔を半分までお湯につけてぶくぶくと泡を立てた。

 ・・・・ちっくしょう!

 滲んでくる視界が鬱陶しい。眉間に皺を寄せて唸った。

 なあーにが神の啓示だ、ばっっっかやろー!!!


 思う存分自己憐憫に浸った後、全身を磨き上げ、やっとさっぱりしてお風呂から上がった。

 化粧水だけをたっぷりとつけて洗面所を出る。

 ・・・はあ~、お腹空いた。晩ご飯食べてないんだもんなあ。ってか今何時なんだろ。もう朝ごはんまで我慢すべきだろうか。

 ぺたぺたと音をたてて居間兼ダイニングのドアを開けると、ヤツがまだ起きていて、座椅子にだら~っともたれかかって本を読んでいた。

「あれ?どうして寝てないの?」

 ちらりと本から視線だけをあげて、ヤツは無言で食卓を指差した。

 ん?とそっちに顔を向けると、湯気をたてる雑炊がテーブルの上に乗っていた。

 ―――――え。

 近寄りながら、私はヤツに聞く。

「・・・これ、作ってくれたの?」

「食べてないんでしょ、ご飯」

「うん・・・そうだけど」

 うそ~、驚くわあ、この男。まさか、お風呂に入っている間に軽食を作ってくれていたとは!

 ふわりと出汁のいい匂いがした。


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