鉢植右から3番目


 私はつい笑ってしまった。湯気が照明の下でキラキラと光っている。

 色んな具材が入れてあるようだった。スプーンを持ってきて椅子に座り、両手をあわせてお辞儀をする。

「・・・ありがと。頂きます」

「うん」

 熱々の雑炊をゆっくりと食べた。その温かさは喉から胃におりて、ついでに私の心も温める。

 全身が温かくなって、ゆるゆると解けていくみたいだった。とてもとても安心した。

「美味しいです」

 振り向いて言うと、やつは本を読んだままで無言で頷いた。

 ・・・もうちょっと表情つけろよ、せっかくいい事したんだからよ。口の中で小さくつっこんでいたら、後ろから、あ、と聞こえた。

「うん?」

 スプーンを口に突っ込んだまま振り返ると、ヤツは壁の時計を指していた。

 私もそのまま時計を見る。

 ・・・午前2時15分。・・・・うん、だから、何?

 怪訝な顔してもう一度ヤツを見ると、苦笑して本を置き、立ち上がりながら言った。

「8月1日。誕生日、だったよな。おめでとう」

 びっくりして、固まった。


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