…だから、キミを追いかけて
「波留の馬鹿!!」


目を丸くして驚く。大きな声は屋内に反響して、周囲にいた人達までが振り向いた。


恥ずかしさよりも悔しさが滲んだ。目の前を歩く人はどんなに想ってもこっちを向かない。視線や笑顔は向けてくれても、肝心の心は他所を向いたままーーーー。



(……そんなの………私には堪えられん…………!)





……波留が好き。

波留が好きだ…と言いたい。

唇の先まで出かかっている。

でも、やっぱり口にはできなくてーーーーー




「帰るっ…!」



向きを変えて走り出した。

遠ざかるのは自分の方。


追いかけてばかりは嫌ーーーーー。


切な過ぎるーーーーーー。






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