…だから、キミを追いかけて
「…ウニまん。食堂のメニューの中で、俺が一番好きなやつ。特別に奢ったるから、有り難く食えよ」

優しい言い方をして、膝を伸ばす。

掌に乗っかったウニまんと、波留の姿とを見比べた。

「…俺、仕事あるけぇ行くわ…。気ぃつけて帰れ…」

白い歯を見せて微笑む。
灯台で見せてくれたのと同じ、優しい面差し。
あの時と同じ優しさで、私の心を鷲掴みにしていく。

何も考えられないくらい、愚かな自分にさせていく。

これが恋なんだ……と、私は波留に教え込まれたーーーーー。






「波留……!」


呼び止めた背中が振り向く。

真っ白な頭の中のままで、私は自分の想いを口にしてしまった………。



「私……波留のこと、好きやけぇ…」


今までとは違う感覚で、伝えたつもりでいた。
なのに、波留はそれに全く気づかなくて……


「知っとる知っとる!ありがとさん!」

適当な答え方をして逃げて行く。

立ち去る背中を見越しながら、伝わらない気持ちをつくづく、苦々しい…と思ったーーーーー。


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