隣のダメ女。
仕方がないのでダンボールを受け取り、一度家に帰宅することにした。


とは言っても、歩いて10秒の距離だ。


「こんなことなら、ドアを開けておくんだった。」



膝にダンボールを抱えて、ジーパンのポケットからボロアパートの鍵を取り出した。



彼女の部屋同様、サビがこすれた音と共にドアは妙な音を奏でた。


彼女の部屋では許せたが、自分の部屋で聞くとなると腹立たしい。



「サビとりしようかな。」



ダンボールのテープを剥がしながら、そんなことを思っていた。


中には、鮭の切り身がパックになって詰められていた。

北海道に住む、親父とお袋が送ってくれたみたいだ。



「沼田さんにも、お裾分けしないとな。仮にも管理人なんだし。」



そう彼女……沼田は、沼田荘に住む管理人。


そして俺が、その隣に住む隅良。



「鮭のムニエル……そのまま、塩コショウでも。刺身でも、いいな。」



今日の夕食内容を、ついニヤニヤしながら思い浮かべる。


鮭の切り身を手にして、冷蔵庫を開けたときだった。




ダーーンッ!!!


隣の部屋から、そんな鈍い音が聞こえてきた。
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