黄泉の本屋さん
「・・・ふふ。初対面の人になに話してるのかしらね」
「いえ。ありがとうございます。・・・あの、都合のいいことではないと思います」
「え?」
「きっと、その人は、幼なじみのあなたの事を見に行ってたんだと思います。わからないけど、でも、あなたがそれほど大切に想っていたなら、きっとその人もあなたの事を同じくらい、それ以上にあなたの事を大切に想っていたと思うから」
だって、14年も、あなたへの想いが消せなくて。
あなたに幸せになってほしくてずっと思っていたんだから。
全ての記憶を失くしてしまうほど長い時間を。
あなたを想って――――。
「きっと、あなたの幸せを、願っていると思います」
幸せになってと、願う。
その声は、もう届くことはないけれど。
その声は、想いになって。
風に乗ってきっと彼女の心へ。
「ありがとう。そうね。きっとそうだわ。健太郎は、そういう人よ。私の事を自分の事より大切にしてくれる。そう言う優しい人だったわ」
幸せな笑顔を浮かべる亜紀さん。
見て。
黒瀬さん。
亜紀さんが、笑ってる。