君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
インターホンを押すと、応答までにかなりの時間がかかった。
開けてもらったエントランスをくぐって、出張用のキャリーバッグを引きながらエレベーターに乗る。
ドアの前で、もう一度チャイムを鳴らす。
鍵の開く音がして、新庄さんが迎えてくれた。
なぜか新庄さんは、ちゃんと服を着ているのに、たった今起きたような風情で。
よう、と言う声も、どこかぼんやりしている。
いや、それよりも。
「新庄さん…」
…熱、あるんじゃないですか?
新庄さんの身体が、熱い。
少し離れていても感じるくらい。
先に立ってリビングへ入った新庄さんが、やっぱりそう思うか、と他人事みたいな返答をしてきた。
たぶん、体温計がないんだろう。
ふうっと息をつきながら、どさりとソファに身体を投げ出す。
見るからに、だるそうだ。
どうしたんだろう。
隣に座って、額を触る。
思わず手を引っこめてしまうくらい熱い。
その額に腕をあてて、新庄さんが、悪い、とつぶやいた。
「連絡しようと思ったんだけど、寝ちまったみたいだ」
「寝てください、私は、すぐ失礼しますから」
答えるのもしんどいんだろう。
ソファの背に頭を預けて、じっと目を閉じている。
こんな新庄さん、見たことがない。
なんだろう、風邪だろうか。
「たまに、あるんだ」
私の疑問を見抜いたように、新庄さんが言った。