君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
抱き寄せられた時、ついたんだ。

と、動揺したのが、失敗で。
タオルを首にかけた新庄さんが、じっと私を見つめる。


「あの、ホテルで、翌日の打ち合わせをしたんです。その時に…」
「その恰好でか」


鋭く言われて、ショートパンツ姿の自分を見おろす。
ですよね…。

形勢が逆転した。
私は、うまい説明が思いつかず、何も言えない。

新庄さんが、ため息をつく。


「まだ他に、俺に言うことがあるんじゃないのか」
「他に?」


煙草をくわえて、火をつけながら新庄さんがこちらを見る。


「新人の話とか」


ええっ!?
なんで新庄さんが知ってるんだろう。


「堤が、そんな話を俺に黙ってるわけ、ないだろ」


私の疑問を察した新庄さんが、面白くなさそうに言う。

思わず小さくなってしまう。
別に私、何も怒られるようなこと、してないのに。


「…いつから知ってました?」
「2週間くらい前だな」


三ツ谷くんが来て、まだすぐの頃だ。
教師と保護者みたいな緊密なネットワークに、今後が恐ろしくなってくる。

ため息をついて、覚悟を決めた。
あんなみっともない話、新庄さんに聞かせたくなかったけれど。

ついてしまった堤さんの香りの話をするなら、全部話したほうが面倒がない。

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