「先生、それは愛だと思います。」完
あいつが嫌がることをして、徹底的に、反抗してやろう。
自分でも子供染みた思考だと分かっていた。最低だと分かっていた。
でも、何もやりたいことが無かった俺には、反抗することでしか、目標が見つけられなかったんだ。
父と母の言い合いを無視して、自室に上がろうとすると、心美が静かに玄関から入ってきた。
心美の頬には涙の跡が伝っていた。
「また、お母さんたち、喧嘩してるの……?」
震えたか細い声が、俺の背中に突き刺さったが、俺は何も言わずに階段を上がった。
また、見て見ぬふりをしたんだ。心美を。家族を。全てを。
俺は、最低の人間だから。
「愛の反対は憎しみではなく無関心です」という、マザー・テレサの言葉を思い出し、全くその通りだ、と嘲笑した。
俺は、なんて、愛の無い人間なのだろう。
家族思いの美里が、こんな俺を見たら、一体どんな表情をするだろう。
* * *
「ねぇ、最近心美ちゃん大丈夫? この間凄く元気ない様子だったから、声かけたけど……」
「あー、そうなんだ」
放課後、教室で一人勉強し終えた俺の元へ、美里がやって来た。
美里は偶然忘れ物を取りに来ただけだったらしく、夜の二十時に教室の明かりがついていたことにとても驚いたらしい。
暫し他愛もない会話をしてたのだが、徐々に何か言いだし辛そうな顔になり、心美の話を持ちかけた。
いつものように興味の無い声で返すと、美里は珍しく眉を顰めた。