「先生、それは愛だと思います。」完
「そのままでい続けたら、あなたは結局、一生ひとりなんだわ……」
「……それでいい。それを望んでる……」
「じゃあもう、私と一緒にいる意味もないね」
そう言って、彼女は教室を出て行った。彼女は泣いている気がしたけれど、引き止めなかった。引き止める権利が、俺には一切なかったからだ。
自分の欠陥している部分をピンポイントで抉られたダメージで、俺は胸を押さえて下唇を噛んだ。
世の中に関心が持てないのは一体誰のせい?
世の中がつまらないのは一体誰のせい?
世の中を愛せないのは一体誰のせい?
それは全部、自分のせいだ。分かってる。分かっていた。
……いや、本当は何も分かっていなかった?
どんなに難解な数式や英単語を覚えても、どんなに優秀な高校へ進学しても、俺の心の中は、頭の中は、空っぽなのか?
自分の心の中にある、大きな穴に気付き、俺は茫然自失した。
しかし、どこか遠くの教室で、すすり泣く女の子の声が聞こえた。
まるで世界のはじっこで泣いているような、そんな悲しい泣き声だ。
俺は、なんだか今の自分にとって他人事じゃない気がして、その声のある方へ向かった。
下駄箱のすぐ近くで、小さな背中を震わせて泣いている心美が、そこにいた。
なんだか知らないけれど、俺はその小さな背中を見た瞬間、涙を流してしまった。
「心美、ごめんな……」
「え、お兄ちゃん……なんで……」
「ごめんなっ……」
心美を後ろから抱きしめて、何度も何度も謝った。