麗しき星の花
 ヴィオラの手入れをしながら思い出すのは、水色の髪のお師匠様。

 私の年のときにはすでに同時召喚が出来ていて、母様が精霊の女王を召喚するまでのフォローをしっかり勤めていたという。

 ヴァンは天才。

 でもそれは、相当な努力を重ねて手に入れたものだ。

 皇都の宮廷精霊士を多く輩出してきた名門エインズワース家に生まれながら、精霊士になれるほどの魔力を示せなかった彼は、一族の落ちこぼれという烙印を押され、それでも認めてもらおうと魔銃士を目指し、頑張った。

 世界を救った勇者一行のひとりで、今は私の従兄であるルドルフ皇太子殿下の護衛官。

 それが、私の尊敬するお師匠様。

 ヴィオラは尊敬するヴァンに貰った銃だ。弟子を取るのなんて初めてですよ、と微笑みながら贈ってくれた漆黒の魔銃。

 父様と母様に貰った同じ色のクローリスも大切なものだけど。

 ヴィオラの漆黒は、少しだけ、特別。


 組み立て直したヴィオラは、橙に染まった太陽の光を受けて、優しくも儚げな色を零している。

 そっと息を吐きながら見上げた空は、水色を覆い隠すように暖かな色が広がっていた。



 射撃場で少し撃ち込んで、夕飯を作るお手伝いをしてくるという玲音と別れ、いつも修行をしている庭の方へ向かうと、シンがやけに気合の入った声でアストレイアを振り回していた。

「ああああー!」

 上段から、ひと振り。

「いいいいー!」

 振り下ろした剣を、八の字を描くように振り上げ。

「ううううー!」

 更に上から振り下ろし。

「ええええー!」

 くるりと回りながら横凪ぎ。

「おおおお──!!!!」

 手元に引き戻して、鋭く突く。

 ……稽古しながら、五十音の復唱。シンは机に向かってジッとしているより、動きながらの方が覚えやすいみたい。

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