麗しき星の花
 星を渡り旅をしていた頃は困難の連続だった。常に安全な星にたどり着くとは限らず、両親は幼いシンたちを抱えて相当苦労したようだ。

 けれども父はいつでも笑顔だったし、そんな父を母は信頼の瞳で見ていた。だからシンとリィもいつも安心していられた。安心しすぎてちょっと色々やらかし、死にかけまくったけれども。

 いつでも助けにきてくれた父は、シンの憧れるヒーローだ。

(よく星の住民たちに感謝されたしなぁ)

 うんうん、と頷く。

 危険地帯に放り出されたときには、やむなくその星の生物と戦うこともあった。父も母もその星の生態を知らずに傷つけることは避けていたので、よほどの危険が迫らなければ命を奪うようなことはしなかったけれど。

 星の住民が手に負えなくて困っていた獣を退治したりするととても喜ばれ、歓待を受けた。お金がなくてもなんとかやってこれたのはそのおかげだ。


 シンが6歳の頃に辿りついた砂漠の惑星では、街に辿りついた瞬間に驚かれたものだ。どうやって砂漠を越えてきたのかと。

 確かに妙な敵がわらわらといた。遭遇すると、なんだかぽわーんとした良い気分になって、思わず飛びつきたくなる敵だ。

 それは『魅了』という術を使う、サキュバスという悪魔だった。豊かに盛り上がる胸と細い腰、緩やかな曲線を描くお尻、人を惹きつける微笑と花のような香り。

 どれをとっても完璧と言わざるを得ない美しい肢体を武器に迫ってくる悪魔。──まあ、女性には気味の悪い肌色をした化物にしか見えないらしいが。

< 130 / 499 >

この作品をシェア

pagetop