麗しき星の花
「とりあえず、駅に戻って」

『その駅がどこだか分かんないんだよ』

「……どうしてそんなに歩き回ったの。じゃあ……人がいそうな方に行って、道を聞いてみて」

『了解ー』

 そこで一度通話を切る。

「兄ちゃん、迷子になっただか?」

 シルヴィが心配そうにリィを見る。

「うん、そうみたい。でも大丈夫、シンは慣れてるから」

 リィはスマホをロングカーディガンのポケットに入れると、また梯子を上って読みかけの本を取り出した。慌てる様子のない姉を見てシルヴィも安心したのか、絵本のところまで戻って楽しげに音読を始めた。

 その数分後。

『リィー、なんか変なとこに来たー』

 リィは梯子の上で兄からのSOSに応える。

「どこ?」

『駅に着いたら、なんか国から金を渡されてさ。その後でサイコロを振らされて、出た数だけ駅を進んでんだけど、また全然見たことない街に来ちゃったんだ』

 リィは首を傾げた。

 サイコロ? 国からお金?

「なにかの事件に巻き込まれたの……?」

『良くわかんね。あ、またサイコロ振れだって。いつになったら天神モールに着くんだろ』

「……サイコロの出た目の数だけ、電車が動くの?」

『そうなんだって。てか、金がなくなってきたんだけど、どうしよう』

「……お金がなくなったら迎えに行くから、また電話して」

『わかったー』

 そこで一旦通話を切った。

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