麗しき星の花
「兄ちゃん、まだ迷子だか?」

 シルヴィが梯子の下から心配そうに声をかける。

「うん、そうみたい……」

「おれ、迎えに行ってやっか? ドラゴンになれば大っきぐなっから、兄ちゃんすぐに見つけられっぺ」

「シルヴィ、お外でドラゴンになったらだめだよ……。シンは大丈夫。慣れてるから……」

 リィはシルヴィに微笑みかけると、また読みかけの本を手にした。それを見てシルヴィも安心したのか、次の絵本を取りに絵本コーナーへ駆けていった。

 その数分後。

『リィー』

 またシンが困惑声で電話をしてきた。

「どうしたの、お金なくなった?」

『や、違うんだけど……』

「……どうしたの?」

『あのさー、一旦駅を出てちょっと歩いたら、学校みたいなとこに着いたんだけどさ。……なんか、かわいい女の子がやってきて、その子に告白されたんだ』

「……誰に?」

『知らない子。卒業式に伝説の木の下で、女の子から告白されて生まれたカップルは永遠に幸せになる、とかなんとか、説明があって……』

「……誰に説明を?」

『空の上から声が聞こえた。で、女の子が俺の返事を待ってる』

「……」

 ナニソレ。

 リィはスマホを握りながらこてん、と首を傾げた。

「よく分からないけど……気のない女の子に適当な返事をしてはだめ……。告白は丁重にお断りして。そして駅に向かって」

『ん、わかった』

 そこで一旦通話を切った。

 リィはしばらくスマホと睨めっこをした後、書庫を出て琴音にタブレットを借りてきた。

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