麗しき星の花
 更にその奥には、この神殿の警備をしていた騎士団の面々が倒れていた。彼らはすでに事切れている。

 ヴァンガードは拳にした右手を胸に当て、奥に倒れる騎士たちに向かって哀悼の意を表した。それから、冷たい水色の瞳で黒づくめの男たちを見下ろす。

 耳のインカムにスイッチを入れ、魔銃のスライドを引いて初弾を装填した。

「……侵入者です。暗部の者を寄越してください。……ええ、そうです。至急宜しくお願いします」

 言いながら、片手で発砲。

 弾は黒づくめの男の肩を貫通し、彼が振り上げようとしていた手から小型ナイフが滑り落ちた。

「急がずとも、貴方がたの行き着く先は……地獄ですよ」

 トリガーを引く瞬間、過ぎったのは大切な人たちと、大切な子どもたちの顔。

 こんなことには巻き込みたくない。

 ヴァンガードはずっと彼らの帰りを待っていた。逢いたくて逢いたくて、10年も探し続けた。けれどもこんな現状を見せるために探していたわけじゃない。

 ただ、しあわせに。

“貴方”が護ったこの美しい星で、しあわせに生きていて欲しい。

 それだけを願っていた。なのに──。


 乾いた銃声が響き渡る。

 それは過渡期にあるこの星の、嘆きの声だった。




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