麗しき星の花
 ルドルフ、ヴァンガード、ローズマリー、そしてミルトゥワに来てから世話をしてくれた多くの侍従たち。

 その人たちと一緒に両親に見送られ、シンとリィは魔法陣の中央に立った。

 荷物は多くない。星を巡っていた時に使っていた皮のリュックには、少しの着替えと、ミルトゥワの言葉を忘れないための本。それから、お世話になる橘家への手土産が色々詰め込んである。

 両親が星を繋いだので、こうして魔法陣を描けば行き来が可能になった。

 星と繋ぐというのは、星の声を聞き、また聞いてもらい、一番近くて一番相性のいい星に道を繋げてもらうことを差す。繋げてもらった道を維持するのは、精霊王としての力を持つリディルと、リディルの『契約者』であるフェイレイの魔力を合わせることで出来る。

 フェイレイとリディルのその力は、色んな偶然が重なり合って生まれたものだった。

 リディルが精霊王の娘であったティターニアの魂を持っていたこと。フェイレイが人と精霊の混血である『呪われし穢れた血』の持ち主で、莫大な魔力を持っていたこと。その2人が婚姻関係にあり、深い絆が生まれたことで新たな力を引き出した。

 星の声を聞き、繋げる力。そして、精霊王召喚の契約。

 小さな精霊たち、そしてそれを束ねる女王たち。更にその頂点に立つ精霊王を、人が召喚することは出来ない。

 皇族に許されるのも女王までだ。それは何も、人を見下しているからではない。精霊王を喚び出すだけの魔力、精神力を人が保てないからだ。

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