いつか晴れた日に
事務所に戻ると、自分の席を片付けてパソコンの電源を落とす。
美香さんに「遅かったわね?」と嫌味を言われたけれど、「すみません」と短く答えてやり過した。

泣いたことは、多分気付かれてない。
もう退社したのか、亜紀のデスクはキレイに片付けられていた。


「安西さん、帰ろうか?」

「あ、はい」

黒崎くんと一緒に美香さんに「お先に失礼します」と挨拶をして事務所を出た。

途中、池永さんの冷たい視線を感じたけれど、気が付かないフリをした。
エレベーターに乗り込み、一階に下りる。二人とも黙ったままで、特に会話はなかった。

資料室から飛び出したことを訊かれるのかなと、身構えていたけどその必要はなかったみたい。


会社の外に出ると、今日一日の疲れがドッと出たのか、気分が悪くなってしまった。

「使ってるのは、地下鉄?それともJR?」

「地下鉄です」

「じゃ、こっちだね」
そう言って、黒崎くんは地下鉄の駅に向かって歩き出す。

駅まで送ってくれるつもりなの?

気持ちは嬉しいけど、今は一人になりたかった。

「黒崎さん」

「ん?」

軽い感じで振り向いた黒崎くんに、ペコリと頭を下げた。

「送ってくれなくても、大丈夫です。さっきは、気が動転して変なところを見せてしまってごめんなさい」

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