いつか晴れた日に
「タクシー止めるね」
そう言って、黒崎くんはタクシーを止めると、わたしを先に乗せ自分も続いて乗り込んだ。
タクシーの運転手さんに簡単な住所と目印の建物を告げて、わたしはシートに凭れかかった。
このまま目を閉じて、眠ってしまいたい。
今日一日、いろんなことが有り過ぎて、キャパオーバーでもう何も考えられそうにない。
黒崎くんと言葉も交わさず、黙り込む。
しばらくそうしていると、黒崎くんは「具合悪い?」とわたしの顔を覗き込んだ。
……やだ、顔が近い。途端に煩く暴れ出すわたしの心臓。
「安西さん、顔が赤いよ?もしかして、熱が出てきた?」
「う、うん。そうかも……」
俯いたわたしの額に、黒崎くんの手が触れた。ひんやりと冷たい掌が気持ちいい。
ああ、勘違いをしてしまいそう。
黒崎くんは、誰にだって同じことをするはずなのに。
わたしだけが、ドキドキしている。
「熱は無いみたいだけど」
「家に帰って横になれば、大丈夫だと思う」
俯いたままでそう言うと、黒崎くんの手は離れていった。