いつか晴れた日に
『怜奈ちゃんが泣くと俺も悲しい』

違うよ、涼。これは悲しくて泣いているんじゃないの。
また逢えたことが嬉しくて。

わたしを護ってくれてありがとう。お願いだから、早く元気になって。

だって、わたし。涼に直接、言いたいことがあるの。
心の中で想いを伝えていると、握っている涼の指先が動いたような気がした。


「涼?」

「どうしました?」

わたしの後ろにいた看護師さんが心配そうに覗き込んだ。

「あの、指が動いたみたいなんです」
そう言うと、看護師さんが「ちょっといいですか」とわたしの前に立ち、涼の肩をそっと叩いた。

「黒崎さん、聞こえますか?」

もう一度「黒崎さん、聞こえますか?」と声をかける。

だけど、涼の瞼はピクリとも動かない。

「残念ですけど、まだ……」

「そうですか」

落胆するわたしに看護師さんは、申し訳なさそうに眉を下げる。


「そろそろ、病室に戻りましょうか?」

「……はい」

看護師さんに促されて、集中治療室を出る。

涼の顔には外傷はなく、眠っているみたいに見えた。もう少し、涼の手を握っていたかった。
ずっと話し掛けていたら、目を醒ましてくれるかもしれない。

なんだか、そんな気がして。
名残惜しそうに振り向くと、看護師さんが「彼氏さんですか?」と小声で訊いてきた。

< 142 / 159 >

この作品をシェア

pagetop