いつか晴れた日に
気を取り直して、もう一度。
「大変申し訳ないけれど、わたし、どう考えても貴方のこと知らないし。
だから、その、今日のところは、お引取り願いたいの」
そうすると、この男は目をパチクリとさせて。
「うん。わかった。じゃ、またね」とニコリと笑って服を着て帰っていった。
その後ろ姿を呆然と見送るわたし。
「…………」
一体、何だったの?
もしかして、変な夢でも見てるのかな?
取り合えず、しっかり戸締りをして、もう一回寝よう。
誰も居ないことを確認して、ベッドの中に潜り込む。
『チビタ』か、懐かしいな。
チビタのことを考えると、別れた日の事を思い出して辛くなるから、出来るだけ考えないようにしていたんだ。
その内、思い出すこともなくなってしまって。
10年も前のことを急に思い出したのは、お酒を飲み過ぎた所為なのかもしれない。
「チビタ」と呼ぶと、クゥンクゥンと可愛く鳴いて、わたしに擦り寄ってくる黒い毛の可愛い子犬。
それが、チビタ。わたしの大切な唯一の友達だった。
性格が内向的だったわけじゃない。
転勤族だった父さんについて転校を繰り返すうちに、わたしは友達を作るのが苦痛になっていった。