いつか晴れた日に
涼はゆっくりとわたしに近付いて、優しくわたしを抱き留める。
だから、わたしは覚ってしまった。

「涼……」

「少しだけ、ここままで」

温かな腕と懐かしい匂い。涼の腕の中にいると、心が穏やかになるみたい。

「怜奈ちゃん……」

「うん?」

やっと、気付いたよ。だから、お願い。
どこにも行かないで。

わたしから、離れていかないで……。

涼はわたしの頬に軽くキスをして。

それから、声を震わせた。


「怜奈ちゃん、俺、行かなくちゃ」

「…………」


「魔法の時間は、もう終わりなんだ」

それは、予想していた言葉だった。


「やだな、まだ一週間経ってないでしょ?」

荷物を片付けながら、立ち尽くす涼を見ない様にしていた。
そうじゃないと、泣いてしまいそうだったから。

部屋着に着替えながら「涼も着替えて」と声を掛ける。

「今から洗濯しちゃおうかな」

独り言のように呟いて、脱衣所に逃げ込んだ。





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