Ri.Night Ⅲ


「──貴兄」


「あぁ。準備は全て整った。後は向かうだけだ」


電話が終わったのか、優音が貴兄を呼び、それに対して貴兄が返事を返した。


二人の姿は見えていないが、きっと目配せでもしているのだろう。



暫しの沈黙の後。



「──行くぞ」



貴兄がそう言ったかと思うと、その呼び掛けと共に複数の足音が倉庫内に響き渡った。


だけど、それはすぐに止まり、代わりにギギッと金属が擦り合う様な鈍い音が聞こえてくる。


扉の音……?



さっき貴兄が発した言葉。



『俺等はこれから奥へ行く』


その言葉の通り、貴兄と優音は扉を開けて何処かへ行こうとしてるんだ。


その扉の先に何があるのだろうか。


部屋?それとも何処かへ繋がる通路?


音だけでは開けた扉の先がどうなっているのか全く分からなかった。


聞こえていた鈍い音が止まり、工場内に静けさが漂う。


怖いぐらい静かになった工場内。


さっきより不気味さが増した気がするのはあたしの気のせいなんだろうか。



静かなせいでよりリアルに聞こえる自分の吐息。


その一定のリズムに反して激しく乱れるのは脳天に響く程の心音。


考える前に反応を示す身体に嫌でも動かざるを得なかった。


追いかけなければ。


その呟きと共に動き出す手足。


機械に手を添え、音を立てない様に慎重に歩いていく。
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