sinner
駅からアパートまで半分くらいの距離を歩いた頃、後ろから声をかけられた。
「こんばんは」
「っ!?」
振り返り見た一メートルほど後方には、お隣のお兄さんが立っていて。
見知った姿を確認して肩の力が抜ける。
「夜道で突然驚かせてしまってごめんなさい」
「いえ。そんな。驚くとか」
「してるでしょ?」
図星された私の動揺が面白かったのか、口元を手で隠しながら、お隣のお兄さんはわたしの足元を指差す。そこには、荷物のひとつが道に落ちていた。そういえば、振り返ったときに腕からひとつ抜けたかもしれない。
「……これは、きっと握力の限界突破なだけですよ」
「なら半分持ちますよ。帰路は一緒なんだし。どこか寄り道があるならそこまでということで」
「いっ、いえっ。ないですけど」
「じゃあ決まり」
咄嗟に嘘はつけず、わたしの手からは重さが半減する。普段から慣れていそうな、自然過ぎるスマートな身のこなしに感心してしまい、断るタイミングは失われてしまった。
「――あ、りがとう、ございます」
「いえいえ。それと」
「? はい」
「もう少し歩くスピード遅くしたらどうかな。ふらふらしていたし」
「――、はい。お気遣いありがとうございます」
別に、そこまで足に疲れは感じてなかったけど、押し付けがましくない優しさが沁みて助言通りにすることにした。