PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―


「鈴蘭さん、だったよね? まだ学校には慣れない?」



いきなり名前を呼ばれて、びっくりした。


ますます胸がドキドキする。



「す、少しは慣れてきました。でも、戸惑うことがまだ多くて。あ、だけど、校舎内の配置は覚えました! もう迷いません」



わたしと伊呂波先輩の出会いは、わたしが校内で迷ったせいだった。


昼休みに職員室に用事があって、五校時の移動教室は職員室から直接向かおうと思った。


そうしたら、自分の場所がわからなくなって右往左往。


そこを偶然、伊呂波先輩が助けてくれた。



「また何か困ったら、頼ってほしいな。そういうのも、生徒会の仕事だから」



そう、仕事だ。


わかっている。


伊呂波先輩は誰にでも親切だ。わたしにだけ優しいわけじゃない。


だけど、わたしはそういうところが好き。


公平で、大人っぽくて、すごい人だ。


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