オネェと私の恋
時は、5分前にさかのぼる。
駅前で溢れる人混みの中から20代前後の女性二人がその男に声をかけた。
一人は肩までの髪にゆるくパーマをあてているのかゆるく風にゆれている。もう一人は、長い髪をお団子に結っている。巷では、ゆるふわ系とされる女性達だった。お団子を結っていた子がそのモデルのような男に声をかけた。
「あのー、もしよかったらお茶しませんか?」
語尾はちょっと伸ばし気味で、ともすればおバカな印象を与えかねない言葉遣い。
だが、ゆるふわ系の雰囲気とも上手にマッチする程度なので、普通は気づかない。しかも二人とも顔を赤らめている。
が、よく見ると、眼光は鋭く、獲物を狙う猛禽類のようだ。
自分が寝坊したばっかりに今、不運な目にあう女性達を見て、急いで男の所まで駆け寄ろうとした瞬間。それは起きてしまった。
おそらく、人生の最大の不幸は起きてしまった。
男は、くるりと振り返って女性達を見た。
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