この感情を僕たちはまだ愛とは知らない
律のプライドずたずたにしたのは私だ
「律ごめんね」
「だからどっちのって···」
私は振り向いた律を押し倒していた
ガシャンと点滴スタンドが倒れる
それもかまわずに私は律にキスをしていた
「ごめんね大好き
すごく好き律が」
「ってぇおまえなぁ」
「ごめん」
私は駆けつけてくれた看護婦さんにも頭をさげた
「んでどうすんだよ?」
「とりあえず考えてみる」
「いっそのこと辞めちまえ後はどうにかしてやるから」
「えっ···」
「さっきの言葉ウソじゃねぇよな?」
「うん」
律は頬を掻きながら考えていた
「俺のこと知りたい?」
「えっと」
私が頷くと律は私の手をひいて自分の病室に向かった
病室に着くとゆっくりと話しだした
「妹がいるのは本当
倉橋悠香、正真正銘俺の妹だ
ヤタガラスは窃盗集団じゃないそんなのマスコミが勝手に騒いでるだけ
本当のヤタガラスは子供たちを使った施設
あの優しそうな笑顔で近づいてきて俺の妹はどこかに消えた
俺は抵抗したけど大人になんて適うはずがない
瑞希はヤタガラスの中でも群を抜いて秀才だった
そんな瑞希さえも餌食になった
俺は命からがら逃げ出したんだ
その後は色々と転々しておまえに会った
ったくなんで泣いてんだよ」
「泣いてない」
「強がんなよったく」
律が優しく抱きしめてくれる
「律ずっと傍にいて」
律は頷くでもなく戸惑っていた
「ゆきって奴に聞かなきゃな」
「ゆきさんは関係ない」
「おまえなぁ」
「律も好きでもゆきさんは」
頭をポンポンと撫でられて私は律をみる
「わかってる」
「明日も仕事に行くのか?」
「うっうん」
私は辞表をだすつもりでいた
もうどうなってもいいや
私はとりあえず家に帰ることにした
病院を出ると見慣れた車が一台
「ずいぶん捜した」
「別に頼んでませんから」
「さあ乗って」
「いえ帰りますから」
「君に帰る場所なんてないんだよ」
強引に手をひかれ車に連れ込まれた
「なんでそこまでこだわるんですか」
「君は僕と約束したはずだよ?」
「でも」
迷ってるとスマホを握らせられた
「君の可愛がっている犬にでも電話をしたらどうだい?」
律に迷惑かけたくない
ぎゅっと目を瞑って律がでるのを待つ
でも一向に出る気配がないので諦めた
「行きます」
「そうか
君に紹介しておかないとならない人がいる
五時に会食の予定だからそのみすぼらしい格好をどうにかしよう」
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