この感情を僕たちはまだ愛とは知らない
私は車に揺られながら華やかな街並みを眺めていた
最初に停まったのは美容室だった
髪を切るつもりはなくただメイクと髪をアップにしてもらい駆けつけたスタイリストの方が秋らしい服装をコーディネートしてくれた
その後に訪れたのは高級料亭
菅さんの後に続いて静かな奥座の方に通された
松の間と書かれた襖を開けると綺麗な年配の女性とすでにお酒を飲み始めている男性がいた
「遅くなりました
ご紹介します、入江田麻衣です」
「どうも」
「直哉の母です」
えっとつまりこれは結婚を前提にとか言う話しだよね
「いやだからその」
「麻衣、座って
料理が冷めてしまうよ」
「あっはい」
菅さんに促されるまま席に着いた
「失礼ですが年は?」
「32です」
「あらまあまだその年でフラフラなさってるの?
最近の若い人は早く結婚するのかと思ってたけど」
「麻衣は優秀なんですよ母さん
だから仕事ばかりで婚期を逃しただけですよ
今も僕の右腕として働いてます
来年には一緒に海外出張も検討しているんです」
「あらあら」
うんざりするこの展開
私は話しをあまりせずに箸をすすめていた
「麻衣さんは直哉とそのなんだしたのかい?」
「お父さん」
「ええもう麻衣さんが求めてきますから」
「ちょっと菅さん」
「あらあら赤ちゃんが楽しみね」
もうムリつきあいきれない
律に会いたい
「赤ちゃんなんて私···」
「麻衣?」
「そんな先の話しわかりません
帰ります」
「麻衣、失礼だよ」
「失礼なのはどっちよ」
私は憤慨していた
ちょうどタイミングがいいんだか悪いんだか律からの着信
でてみると呑気そうに欠伸をしている
「どうした電話なんて」
「もういい」
「はあ?」
「だからもういいの」
「悪かったな」
えっ···
「なんで···」
「検査であんまり寝れてねぇんだわ
さっきも電話にでれなくて悪かった」
「···ごめん
ねぇ律なに食べたい?」
「はあ?」
「いいから答えて早く」
「おまえ」
「遊んでないで」
「つーか明日なマジ眠い」
「律ちゃんと答えてよ」
律に迷惑なのはわかっていた
けどもっと声を聞いていたい
律からの通話がきれると後ろから抱きしめられた
「2人でいたいなら言えばいいのに」
菅さんの甘い声が後ろからした
「ごめんなさい勝手に抜けだして」
「さあ部屋に戻ろう」
私はけっきょく一夜を菅さんと過ごした
朝起きたベッドも菅さんと一緒だった
また律を裏切ってしまった
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