この感情を僕たちはまだ愛とは知らない
はっきりと言い捨てられて私は言葉をなくした
「律」
「最後のチャンスをやるよ昼までに病院に来い、いいな?」
「うっうん」
「なんか不服そうだな」
「別に」
「返事ははいだろ」
「はい」
私の言い方があまりに悪かったのかすごい勢いで通話がきれた
「どうしたの?」
菅さんが声をかけてくれる
「なんでもないんです」
「君の犬かい?」
「あっえっまあ」
「捨ててしまったらいいんじゃないかな
君も楽になると思うけど」
律を捨てる?そんなことできない
「あの昼には用事があるので」
「仕事は休むのかい?」
そうだった···
「いえ昼休みに少しだけ」
「スマホを貸してくれないか?」
私が返答にあぐねていると強引にスマホが奪われた
「やあ律くん」
「ふーんあんたが一緒にいた相手」
「君は彼女を幸せにはできないよ地位も財産もない端くれの最下層の君には」
「それはあいつが決めることだから」
「君に勝ち目はないんだ諦めなさい」
「偏屈な大人に言われたくねぇよ」
律が一方的に通話を終了したらしい
「さあ行こう」
「これ以上、律を傷つけることをしないで下さい」
「君が言うことをきいてくれるならね」
会社に着いても散々だった
ほとんどが菅さんのお守りで会社からは異例の昇進なんて言われる始末
いつの間にか昼休みになっていて私は慌てて会社を出ようとした
「行かなくていいんだ」
「ケジメをつけに行くだけですから」
私はそう言って病院に向かった
病院の受け付けには相変わらずたくさんの人がいた
病室に向かう途中、声をかけられた
「3分遅刻」
「律、動いて平気なの?」
「なんでそんなに心配してんのかなおまえが
つーか天気いいから中庭いくぞ」
「あっうん」
あきらかにムリしてる
させてるのは私だけど
中庭のベンチに腰かけながら律に言う
「あのねごめん」
「それはどっちの?
俺はふられたのおまえに
それとも後ろめたいことがあって俺に謝りたいの?」
律は頭の回転の速い人だ
「えっ···と」
「俺は優しくしないよ今回は」
「···」
「話せないことなの?
みくびってる?俺のこと
俺が傷つくとか周りがどうのとかそれってけっきょく他人事だろ
おまえの意見はどうなんだよ
俺は傷つくことなんか怖くねぇんだよ」
「私の意見」
「会社がどうのって
俺がどうにもできないって思ってんの?
ずいぶんおまえも俺をコケにしてくれるよな」
「あのだからそうじゃなくて」
「もういい」
< 22 / 38 >

この作品をシェア

pagetop