恋する歌舞伎
八重桐は「傾城のラブレターを代筆しますよ~」

とわざとお屋敷の周りで売り声をあげる。

つまり自分は職業柄、普段知ることのできない、廓世界の表裏を知っているのでそれを面白おかしく話して聞かせ
ますよというアピールになるのだ。

作戦は大成功で、興味津々の腰元の手引きで屋敷に招き入れられる。

中に入ると、やはり煙草屋というのは、夫で武士の坂田蔵人時行(さかたくらんどときゆき)だった。
そこからは八重桐の徹底攻撃開始。

「自分はかつて遊女だったが、ある男を巡って他の遊女と大バトルをした。

私が勝利し廓を抜け出て結婚したが、その男は敵討ちを口実に逃げてしまった。今頃どこで何をしているのかしら!」

と得意のしゃべり芸を披露する。

もちろん男とは時行のことで、目の前で当てこすりをしたのだった。

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