秘め恋*story7~試着室で…~




この後もまだ仕事をしなきゃいけない。



泣いちゃだめ。そう自分に言い聞かせ、残りのお昼休みをデパートの屋上で過ごした。



頬を軽くパチパチとして、気を引き締めると午後からの仕事に戻った。




「いらっしゃいませ。」




今日はシーズンオフの商品入れ替えで、私も店の表に出ていた。



山下さんと中村さんも仕事はしているものの、ペチャクチャとお喋りを楽しんでいた。



良かった、個室から飛び出したのが私だって気づいてない。




でも、気づいてもらった方が少しは良かったかも。
だって、少しは気まずく思うでしょ?
私はこんなに悲しいのに、相手は何も思わないなんて…




「そこの人達、業務に集中してください。
お客様もおられるのに、立ち話なんてもっての他です。」



「す、すみません。」




商品を棚に並べていた手を止め、そんな声がした後ろを振り返ると…




「こら君達、専務の前で何を失礼なことを。」




部長が中村さん達をたしなめると、隣にいるビシッとスーツを着こなしている男性にペコペコとしていた。



さっき、中村さん達を注意した人ってこの人なんだ。…専務って言われてた。



確か専務って、このデパートの社長の息子さんだったような…



そんなことをぼんやりと考えていると…



あ、どうしよう。


専務と呼ばれていた人と、ばっちり目が合ってしまった。


とっさに目を逸らしたけど、時すでに遅し…




「園山部長、あとは1人で回れますから。」



「あ、そうでございますか。では、私はこれで失礼させていただきます。」




部長に断りを入れたその人は、スタスタと私の方へ向かって歩いてきた。



わ、わ、どうしよ。こっちへ来るっ。




「相変わらず、真面目で丁寧な仕事で感心するよ。」



「え?」




相変わらず?
すごく親しげに話しかけられて、?が頭に浮かぶ。


何でこの人…じゃなかった、専務。
私のこと知ってるんだろう?


でも、この人の声、聞いたことあるような…







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