王子な秘書とシンデレラな御曹司
「コピーを取ればよかったんです。ファイルを開かなくてもコピーは取れますもの。どうしてそんな単純な事をしなかったんだろう」
「雅さん」
「私が悪いんです。私の不注意なんです」
「雅さん落ち着いて」
パニクる私を抑えるように
副社長は私を抱き起してその胸の中に強く抱きしめる。
懐かしいその広い胸に抱かれ
私は何度も「ごめんなさい」と言いながら泣いていると
「もう大丈夫。ほら落ち着いて深呼吸してこらん」
こんな一大事に副社長は焦る様子も見せず、私を優しく包み込むように抱いて耳元でそっとささやく。
気持ちが少しだけ落ち着き
嗚咽だけが身体中に響く。
「大丈夫だよ。もう泣かないで」
「責任取ります。何でもします」
「何でも?」
「はい」
「それ忘れないでね」
そう言いながら軽く笑った気がした。
笑った?まさかこんな時に?
涙でぐしょぐしょの顔で副社長を見上げたら「すごい顔してる」ってやっぱり笑われた。
「笑わないで下さい」
「ごめん。それより手は大丈夫かな?」
ハンカチを開くと
ただのすり傷だったので、副社長は安心する。
「雅さん」
「はい」
「よくできました。ミッション完了」
満面の笑み。
そしていきなり彼は私の唇にキスをして、机の上の電話を手にしてどこかに内線をかけた。
「小堺さん?昨日の8時から今朝の9時にかけて実行したようです。ええ……頼みます。ですね、一気に送りましょう。お願いします」
もうテンションアゲアゲ
ウキウキ気分がこっちにも伝わりそうな
とても楽しそうに会話をしていた。